高所恐怖症でのっぽビルには仕事でない限り行きたくないし、住む予定など全くなかったのだが、諸般の事情で20階建ての8階に住むことになってしまった。
初めて部屋に入ったとき、窓から見える景色は、右手には細かい家並みがぎっしり詰まっていて屋根の波しか見えない。で、左手はというとマンションが1,2,3,4、そして現在進行中のものがほぼ完成間近という、見慣れた「都会」の景色だったので、高所恐怖症をつい忘れて「なんだかなぁ」と呟いてベランダに出てしまった。少し遠くにある丘がきれいに見えるにもかかわらず、どうしたことかあまりにもありふれた景色なので、怖さなんて少しも感じなかったのである。
その後、すぐには毎日住むことができず、時折行く住居になっているのだが、行く度に怖さが減じていて、高所に慣れることができる!と少しだけ嬉しい。最近は、高所が心配で大きな決心して来たにもかかわらず、ベランダで洗濯も干せるようになった。粉雪が下から舞い上がってくるダイナミックな動きも楽しい。
そうです。69歳にして新しい力を獲得したような、ちょっと不思議な気持ちの毎日なのです~(^^♪ タワーマンション高層階に住んでいる友達のところに行ける日も近いかも・・・
日々あまりに忙しいと、自分が何を志してこの年までやってきたかもすっかり忘れている時がある。なかなか委員になってくれる人がいないので、引き受けざるを得なかった母校東京藝術大学音楽学部の同声会埼玉県支部の運営委員。今年度は2年に一度のコンサート開催年なので、「会計担当(計算が超不得意というのに)」として結構緊張して過ごしていたが、いやー!やっててよかった!(・・・どこかで聞いたフレーズですが)。声楽家をめざして声を作り上げることに血道を上げていた日々がよみがえってきて、背筋がしゃんとなった(気がした)。
そして。コンサート当日は裏方に徹したのだが、洋楽演奏の間に設定された「邦楽」演奏の舞台は思いがけずじっくり聴く事ができた。演奏曲目は「五段砧」で、箏曲ながら尺八も入り、華やかさと静謐さもあるまさに絶妙な演奏だった。この曲は1830年から44年ごろ(天保年間)に光崎検校によって作曲されたもので、箏曲の近代史を創ったものであるという。近くなったり遠くなったり、二竿(山田流と生田流)の箏と尺八の波打つ響きは豊かで、心に沁みた。
このところかなり記憶が怪しくなっている母が繰り返す一つ話に、祖母が奏でる箏の音色がある。秋の月夜に明かりを消し、祖父を慕って集まった青年たちが縁側を開け放った座敷で、静かに響く箏の音を身じろぎもせず聞き入っていた絵のような風景。小学生だった母と若かりし祖母の姿はとうてい想像もできず、箏の音だけ想像するしかない。
小・中学校の音楽科では「邦楽」も子どもたちは学習しているのだが、多種多様な音や音楽が身近に溢れかえっている現代で、箏の音は子どもたちにどんなふうに聞こえ、受け止められているのだろうか。これ、赤ちゃん学でも研究してみたいものです。
先々月の小西行郎センター長の“つぶやき”に,とてもハードスケジュールで全国のいろいろなところで講演をされている様子が記されていました。まだ,お読みでないかたは,是非バックナンバーに目をお通しくださいませ。
昨年度は,小西センター長の講演に一緒にいかせていただき,連続で講演すると言う得難い経験をしました。小西先生の講演はパワフルで,聴衆にどんどん質問を投げかけながら,その場でやり取りをするなど,会場を笑いに巻き込みながらのパフォーマンスで、アッという間の90分です。この連続講演は,小西先生がお話しになった後で私が二番手で登壇させてもらいましたので,いわゆる《座があったまって》いてなんとも快適に講演ができました。つまり,センター長を前座にするというビックリの体験をイタシマシタ。
今年はその御縁で,同じ地方に改めて行かせて頂きました。そこで,講演会を企画してくださった方々が口を揃えて話されたのは,「赤ちゃん学」そのものの視点の重要性と、小西先生が昨年度の講演でばっさり切られた「慣習に頼る保育の現状打破」の意義でした。
平成30年度からは、乳幼児の保育と教育にかかわる「保育所保育指針」「幼稚園教育要領」「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」が改訂・改定され,特に0.1.2歳児の保育の重要性を念頭に置いた記載がなされています。これまで,3歳未満児として大きなくくりで提示されていた生活や遊びの姿が,より赤ちゃんや年少幼児のありのままの姿に寄り添った記述になりました。保育と幼児教育の分野では,小学校の教科にあたるものは5つの「領域」となっています。それぞれの発達段階で「育(はぐく)みたい力」を領域にそって実現できるよう,また,保育者が目前の子どもたちのために構成した環境の中で,子ども自身が進んでやり取りしながら探索できるよう,配慮することが基本になっています。最近特に話題になっている「アクティブラーニング」は,すでに保育と幼児教育では当たり前の方法といえましょう。
赤ちゃんの時から「試行錯誤しながら学んでいる」という視点が,正しく理解され保育の活動においても役立つよう,さらに「赤ちゃん学」の紹介に努めたいと燃えて(・・・)います。
赤ちゃん学研究を基盤にした、保育・幼児教育分野の音楽教育に関する教科書を作っている。これは日本赤ちゃん学会の音楽部会が実施している音楽表現講座「赤ちゃんと音楽」で講師を努めるメンバーが中心になり、編集、執筆したものである。12月上旬には上梓される予定だが、この本の「かなめ」の一つは、赤ちゃん学が明らかにしてきている赤ちゃんの育ちの姿を「証拠」にして書かれていることである。その中でも「聴力」がどのように成長の過程で変化するかについて、本学赤ちゃん学研究センターの嶋田容子研究員が執筆されているが、そこで示された事実は、現在の「保育音楽」のあたりまえをおおきく変化させるものになると思っている。つまり、保育室内での赤ちゃんとの音楽表現活動が、見直されるのではないか?と。
乳幼児期に関する音楽教育は、ともすると英語教育と同じく「早期教育」の立役者となることが多く、これまでの36年間の教員生活でいろいろな育児雑誌から取材を受けた。が、早期教育の視点では、音楽が私たちにもたらしてくれる「楽しみ」や「歓び」「やすらぎ」、時には「なぐさめ」や「励まし」という、まるで友の力のようなすばらしさはすっかり忘れ去られて、赤ちゃんの「脳」の発達に良い音楽は?とか、「絶対音感」を付けるには何歳からレッスンが必要か?などという問いに終始した。
赤ちゃんの聴こえのすばらしさのみならず、その聴力の特殊性を知ると、音楽は教えるものという考えやピアノ伴奏で歌うものという「しきたり」の、保育の場での音楽活動が大きく転換するのではないかと思える。赤ちゃんと親や保育の声や表情、視線や体の動き、による何気ないやりとりの中に「音楽遊び」の神髄を位置付ける重要性が良く見えてくるだろう。
どうして?何それ!と、思われた方は是非とも読んでみてくださいね。
「…え、これって、宣伝ツブヤキだったの?」
「うん。ついでにもう一つ宣伝すると、今年の音楽表現講座の第一回目の講義は本学赤ちゃん学研究センター長小西教授の『赤ちゃん学と音楽』の講義から始まるの。11月19日20日と12月17日が開催日で、会場は聖心女子大学です。詳細は『日本赤ちゃん学会HP』で見てくださ~い!」