志村先生の講演を聴いて
ご講演の中で、ある保育園の一室の様子が映されました。隣室の歌声が壁の向こうからはっきりと聴こえ、その歌を歌い始める子もいるほどでした。これでは大人でも、自分の活動に集中できそうにありません・・・子どもならなおさらです。他にも、音楽ホール並みに反響する保育室あり、声が筒抜けのオープンスペースの保育室あり・・・かなり厳しい音環境の園が少なくないそうです。
「保育園の騒音」問題は社会的に注目されていますが、その中にいる子どもたちの生活について、つまり子どもを包む「音環境」について、気にしている人が少なすぎるような気がします。志村先生は、この問題に早くから注目し、聴覚・建築関係の専門家を巻き込んで調査を重ねられています。「音」も子どもを育む大切な要素。保育の今後のためにとても重要な研究だと感じます。
(嶋田 容子)
黄砂・PM2.5のアレルギーの影響〜エコチル追加調査「黄砂と子どもの健康調査」より〜
黄砂が飛来すると、アレルギー疾患を持つ子どもへどんな悪影響があるのか。
ご自身もお子さんの喘息で悩まれていた金谷先生の研究の中間報告を聞かせていただきました。環境省エコチル調査で得られたデータと追加調査で集めたデータを合わせて解析し得られた知見は、やはり黄砂がアレルギー症状を出現させるリスクを上昇させるということでした。黄砂自体は無くせないが対策はとることができるので、このように研究に基づく正しい情報を発信し続けることが大切という、研究者であり母親である金谷先生からのメッセージが印象的でした。
一方で、極端に黄砂や日焼けを恐れて外出を控えると、ビタミンD欠乏を引き起こすリスクがあり、その結果かえってアレルギー症状を悪化させたり、その他の異常が表れるリスクが高まることを懸念され、日光を浴びてビタミンDを増加させることの重要性についてもデータと合わせて紹介していただきました。
今後は脆弱者に対する黄砂濃度等の気象情報を提供することの有効性を検証され、ゆくゆくは母親をはじめアレルギー疾患に悩みを持つ方々の安心につながるサポートの構築を目指されるということで、かつて息子のアレルギー症状で苦労した経験を持つ私も、金谷先生のこれからの研究にとても期待しています。
(小西かおり)
子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)〜北海道ユニットセンターの歩みと独自追加調査について〜
エコチル調査開始から5年を経たところで、あらためてこれまでの歩みを振り返り、今後の調査をどのように進めていくのかを確認させていただきました。8歳時に全国10万人を対象とする学童期検査を検討中で、『胎児期から小児期にかけての化学物質曝露歴をはじめとする環境因子が、妊娠、生殖、先天奇形、精神神経発達、免疫、アレルギー、代謝.内分泌系等に影響をあたえているのではないか』というこの調査の中心仮説の検証を、さらに詳細に進める目的で計画されるとのことでした。その他、各ユニットセンターから様々な追加調査の成果を発表されていること、研究者の真摯な取り組みを知り、集めたデータを有効に使って成果を社会に還元していただきたいと思いました。
川西先生は、スキンシップについてエコチル調査のデータと連結して研究されることを計画しており、スキンシップによるオキシトシン増加の効果を介した社会的コミュニケーション障害の軽減作用についての仮説を、今後検証していきたいという興味深いお話をされました。
妊娠期から子育て中の忙しい現在まで、長期にわたり調査に協力されている多くの皆さんの期待に応えるためにも、今後、環境省、コアセンター、ユニットセンターがそれぞれの役割を果たし、より多くの成果を報告していただきたいと思います。
(小西かおり)
池本先生の講演を聴いて
11月28日(月)今出川校地良心館にて、第5回赤ちゃん学研究拠点セミナーが開催されました。セミナーの感想として
・まだまだ日本は、「子どもの権利」をしっかりと主体とした教育体制が整ってないと感じました。
・実際に参加して、とても興味がわきました。
・大量の情報をわかりやすくご説明いただき、心から感謝しております。
・「子供は宝」という文化になって欲しい。
など、様々なお声をいただきました。
全体の感想としては、仕事、家庭、地域は切り離されたものではなくなり、個人の働き方、生き方の姿勢が、いっそう問われてくるということを実感する時間でした。
(田中麻由美)
川口先生の講演を聴いて
冒頭に先生がいくつかの数字をご紹介くださいましたが、まずはその数字に驚きました。
2010年時点でその5年前と比べて女性の就業継続率が13%近く増加していること(おそらく現在はもっと高くなっているでしょう)。それだけ増加しているにもかかわらず就労女性の妊娠出産を理由とした職場での不利益、いわゆるマタニティハラスメント(あるいはマタハラ)を受けたことのある女性は20−30%近くにのぼるのです。
今後の日本は労働者人口がますます減っていきます。その減少を補うためには女性の就労は推奨されるべきですし、その女性が妊娠出産があっても継続して就業できる環境を整える必要があります。そのなかでマタハラは妨害となります。にもかかわらずこれだけの割合で発生しているのか。。川口先生の行われた2000人規模のアンケートによると、妊娠中にうけたマタハラとして最も多いのが「心ない言葉をかけられた」というものでした。法律によりマタハラを規制することはできるかもしれません。でもセクハラやアカハラと同じく、立場的に上の人の意識変革が重要なのだなと感じました。
(加藤正晴)
11月23日(水.祝) 第4回サイエンスカフェ「こどもをみる 小児科医の視点から」を開催しました。
講義前半は小児科医が子どもの病気を正しく診断するために、どのような視点で診察をおこなっているかを実際の例を上げてお話していただきました。後半は子どもの安全を守るという観点で研究を進めている渡部先生のこれまでの研究成果、今後の研究テーマについて、最後にはチャイルドビジョンを使って、子どもの視野は大人が思うより狭いことを参加者の皆さんに体験していただきました。
渡部先生の優しい雰囲気と座談会のような会場のレイアウトで、いつもに増して和やかな(にぎやかな(笑))講座になりました。