黄砂・PM2.5のアレルギーの影響〜エコチル追加調査「黄砂と子どもの健康調査」より〜
黄砂が飛来すると、アレルギー疾患を持つ子どもへどんな悪影響があるのか。
ご自身もお子さんの喘息で悩まれていた金谷先生の研究の中間報告を聞かせていただきました。環境省エコチル調査で得られたデータと追加調査で集めたデータを合わせて解析し得られた知見は、やはり黄砂がアレルギー症状を出現させるリスクを上昇させるということでした。黄砂自体は無くせないが対策はとることができるので、このように研究に基づく正しい情報を発信し続けることが大切という、研究者であり母親である金谷先生からのメッセージが印象的でした。
一方で、極端に黄砂や日焼けを恐れて外出を控えると、ビタミンD欠乏を引き起こすリスクがあり、その結果かえってアレルギー症状を悪化させたり、その他の異常が表れるリスクが高まることを懸念され、日光を浴びてビタミンDを増加させることの重要性についてもデータと合わせて紹介していただきました。
今後は脆弱者に対する黄砂濃度等の気象情報を提供することの有効性を検証され、ゆくゆくは母親をはじめアレルギー疾患に悩みを持つ方々の安心につながるサポートの構築を目指されるということで、かつて息子のアレルギー症状で苦労した経験を持つ私も、金谷先生のこれからの研究にとても期待しています。
(小西かおり)
子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)〜北海道ユニットセンターの歩みと独自追加調査について〜
エコチル調査開始から5年を経たところで、あらためてこれまでの歩みを振り返り、今後の調査をどのように進めていくのかを確認させていただきました。8歳時に全国10万人を対象とする学童期検査を検討中で、『胎児期から小児期にかけての化学物質曝露歴をはじめとする環境因子が、妊娠、生殖、先天奇形、精神神経発達、免疫、アレルギー、代謝.内分泌系等に影響をあたえているのではないか』というこの調査の中心仮説の検証を、さらに詳細に進める目的で計画されるとのことでした。その他、各ユニットセンターから様々な追加調査の成果を発表されていること、研究者の真摯な取り組みを知り、集めたデータを有効に使って成果を社会に還元していただきたいと思いました。
川西先生は、スキンシップについてエコチル調査のデータと連結して研究されることを計画しており、スキンシップによるオキシトシン増加の効果を介した社会的コミュニケーション障害の軽減作用についての仮説を、今後検証していきたいという興味深いお話をされました。
妊娠期から子育て中の忙しい現在まで、長期にわたり調査に協力されている多くの皆さんの期待に応えるためにも、今後、環境省、コアセンター、ユニットセンターがそれぞれの役割を果たし、より多くの成果を報告していただきたいと思います。
(小西かおり)