2019年2月28日 第14回定期セミナーを開催しました。
定期セミナーは、人の発達にかかわる様々な研究者を結びつけ、最新の赤ちゃん学の知見を得ていただき、情報共有の場となることを目指し、2016年度から文部科学省認定 共同利用・共同研究拠点の事業の一環として行っています。
今回は、高橋 翠先生(東京大学大学院教育学研究科 附属 発達保育実践政策学センター(Cedep)特定助教)、佐治 量哉先生(玉川大学大学院 脳科学研究科 准教授/赤ちゃんラボ 研究員)をお招きし、それぞれの赤ちゃん研究拠点での研究についてご講演いただきました。
髙橋先生に講演いただいた「我が国の乳児保育の実態と課題を探る~全国保育・幼児教育施設大規模調査結果から~」では、まず「保育の質」とは子どもの幸福や発達を中核とした多層構造を成していること、保育者、園、国や自治体等の行政が相関して多層システム全体が上手く機能することでもたらされるものであることをお話しいただきました。その上で、2015年度末に実施された「全国保育・幼児教育施設大規模調査」の結果からみえてきた、日本の保育の実態と課題、そして、今後の「保育の質」の向上のために保育者を取り巻く労働環境の改善や保護者・地域の参画が重要であることを聞かせていただきました。
セミナーの後半は、佐治先生に「見た目ではわからない赤ちゃんの眠り~睡眠脳波研究が拓く生後1年間の眠り~」をテーマにお話いただきました。
赤ちゃんの眠りには、生物種を超えて哺乳類に共通する眠りのスタイルと、ヒトに特有な眠りのスタイルの2つが共存していること。生後1年間の赤ちゃんの眠りは、これらが時間的・内容的に巧みに組み合わさっていくことをお話され、その生後1年間の眠りを睡眠脳波研究の立場から分析した結果をご紹介いただきました。
「眠り」は、目に見えない土壌のような役割を持ち、赤ちゃんの発育・発達に重要な役割を果たすこと、そして良い睡眠のために環境を整えてあげることの必要性についてご提案くださりました。
今年度開催の定期セミナーは今回が最終となります。今年度開催した4回の定期セミナーと合同シンポジウムでは、多様な分野の先生方にご講演いただき、また研究者、保育・医療の現場でお仕事をされている方、赤ちゃんを連れた保護者の方など、様々な立場の皆さまにご参加いただきました。ありがとうございました。
このような基礎研究と実際の現場とが交流する場となる機会を、今後も企画していきたいと思います。