この度、赤ちゃん学研究センター加藤正晴准教授の論文が日本音響学会誌に掲載されました。
【タイトル】発達科学から見た多感覚統合の世界
【著者】加藤正晴
【掲載誌】日本音響学会誌
【概要】新生児において物体の形状における触覚と視覚の対応づけがすでにできることを示したMeltzoffとBortonのおしゃぶり実験や、聴覚(音声)と視覚(口の形)の対応づけがすでにできることを示したKuhlとMetlzoffの実験は発達の分野における感覚統合の代表的な研究として大変有名です。これらの研究はそれまで学習によって感覚間の「対応づけ」がなされていると思われていた観念を大きく覆した研究でした。しかし複数感覚が存在することで、より詳しく、素早く世界を知覚する、あるいは信頼性の高い感覚情報をもとに別の感覚を育てるといった現象がおきるのか、言い換えると、「統合する」能力がいつから芽生えるのかについてはあまり研究も多くありませんでした。しかし、2010年ぐらいから感覚「統合」の発達研究が徐々に盛んになり今まさにホットなトピックになっています。
本解説記事はこの最新の研究動向を日本語で解説した記事となります。わかってきたことは、対応づけは生後ごく早い時期から成立している一方で、統合には時間がかかり、10歳近くまでできていないらしいということです。Goriらは、成人の感覚統合の研究を大きく進展させたErnstらの最尤推定モデルの考え方を幼児研究に導入し、こうしたことを明らかにしてきました。本解説記事ではGoriらの研究についても詳しく紹介しています。
さらに感覚統合と発達障害の一つである自閉症スペクトラム(ASD)との関係についても近年注目されるようになってきました。本解説記事でも、ASDの早期発見のための兆候の一つとしてASD児の感覚統合の非典型性についても紹介しました。
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