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著者: 小野 恭子

小野 恭子 プロフィールへ

宇宙で唯一の物語

  • 投稿日: 2017年05月17日 著者: 小野 恭子

ひさしぶりに会った友人と出産時の話になった。友人夫婦はともに背丈もあって、がっしりタイプ。そんな二人の赤ちゃんも、おなかの中にいるときから、ビッグサイズだった。生まれるまでの2ヶ月ほどは里帰りをしていたから、最盛期を見ることはできなかったが、里帰り前に会った時でさえ、立派なおなかぐあいだった。本人の申告によると、出産直前は笑えるほど大きかったとか。

そんな大物の赤ちゃんは、予定日などに振り回されず、悠々として、予定日を1週間越えても出てこなかった。彼女の方は絶対安産に違いないと思われる見かけなのだけど実は見かけ倒し…骨盤が狭かったらしい。予定通りだとしてもビッグサイズになってたのに、さらに1週間も成長してしまった赤ちゃんの頭はとても通ることができず、結局おなかを切ることになった。

出産ストーリーは、これまで数々聞いてきたけど、誰の話もスリリング…。目の前でにこにこして話してくれているのが不思議なくらい。そしてどれひとつ、同じパターンなどない。お母さんの身体の条件がみんな違うし、その中で育っている赤ちゃんだって、みんな違うからね。

お母さんの身体は工場ではない。だから、同じものを同じように生産することなんてできない。むしろ宇宙のようなもの。いろんな偶然と必然がからみあって小さな生命を育んでいく。

10ヶ月ちょっとの月日、その宇宙にふわふわと浮いている間、赤ちゃんにもいろんなストーリーがあったことだろう。それは誰も聞いてあげられないけど、赤ちゃんの身体には刻まれる。

そして外へ!
母にとっては出産、赤ちゃんにとっては新しい世界への旅立ち。その道のり、それぞれが、宇宙で唯一の物語。

みんな、そんなに違うストーリーを紡いで子どもと出会うのだから、子育てだってさまざまでいいじゃないかと思う。子どもの育ち方も、いろいろでいいじゃない。

子どもたちの中にも宇宙がある。そこから始まる物語も、誰とも違う、たったひとつの物語。

新しい緑がまぶしい季節、
生命の持つ力に敬意をこめて。


(右は奈良・春日大社の砂ずりの藤、左は春日山の中でからみつきながら高みで咲いてる野生の藤)


”暑さ”の向こう

  • 投稿日: 2016年09月01日 著者: 小野 恭子

小西先生がやってくると、まず一声、「あっぢ~!」
はい、暑いです、夏ですから。
にしても、暑い、とか、寒い、とかってなぜか口に出してしまう。
言ったところで変わらないんだけどね、とため息をつきながら。
これは、私ひとりが暑いんじゃないよね?という確認でもあり、
あなたも暑いなら、そこんとこで仲間だね、
と安心する材料なのかもしれない。

で、暑い暑いと言っているうちは、その中でどっぷりと、
実は“暑い”に甘えて安心しているところもある。
とりあえず暑いときは無理しないでおこうよ、とか、
夏のうちはしょうがないよね、とか。

でもふと、仕事が終わって外に出てみたら、
なにげに湿度の低い風が吹きすぎていき、
草むらの中からコロコロと虫の音が聞こえてきたり、
明けがた、薄手のタオルケットを引き寄せていたり、
朝の陽ざしが少しまるみを帯びてきたような気がしてくると、
ちょっとどきっとする。

夏、終わる?
気がつけば9月がそこに…。
“暑い”も“夏”も得意な方ではなかったはずなのに、
この焦るような、せつないような、さみしいような、
心の下の方がふるふると揺れるような落ち着きの悪さは
なんなんだろう?

もう“暑い”に甘えられなくなる。
もう今年の3分の2が終わってしまう。
そして…次の区切りは、
もう年末になってしまうのである…。

残された4ヶ月を、まだ少し“暑い”の言い訳ができる地点から
そぉっとのぞいてみると、
“寒い”が沈んでいるところまでは透き通っている。
その言い訳のできない、しばらくの時間を
これからそれぞれに、もくもくと、あるいはちゃくちゃくと、
進んでいかなければならないのかな…。
そうしたことのささやかな覚悟がかたまるまで、
ふるふると心は揺れてしまうのだろう。

なんてことを、ひぐらしの鳴く声に聞き入りながら思った
夏の終わり。
とはいえ、おいしい季節の始まりです!

なら燈花会@猿沢池

なら燈花会@猿沢の池


はじまりは赤ちゃんから

  • 投稿日: 2016年04月19日 著者: 小野 恭子

2008年10月、同志社大学の小さなプロジェクトのひとつとして“赤ちゃん学研究センター”が、京都府最南端の関西学術研究都市(けいはんな)の片隅で始動した。
たった4人の「はじまり」だった。
そして…。
2015年4月に同志社大学の先端的教育研究拠点として認められた。
目の前の“やらねばならない”と“やりたい”とを追いかけてきた時間は、長かったようにも思えるし、短かったような気もする。

ただ一番しあわせだったと思えることは、折に触れてひとり、またひとりと力を貸してくれる人たちがスタッフとして加わってくれたこと。
先日、けいはんな記念公園の満開のソメイヨシノの下で、歓迎会をかねたお花見をささやかに催した。全員がそろうことはできなかったけど、みんなの自己紹介を聞いていたら、いろんなエピソードが思い出され、ここまでの日々が赤ちゃん学研究センターにとって欠かせない時間だったと、あらためて実感できた。
hanami
あがいて、もがいて、動きまわった8年半は、もしかしたらまだ、おなかのなかで育っていた状態で、今、ようやくオギャァと外に出てきたところかもしれない。これからハイハイ、ヨチヨチ…と大きくなっていくのだとしたら、このさきの時間と経験もかけがえのないものとなるに違いない。

はじまりは赤ちゃんから。

どんな経験も、そこから学べば宝物。
赤ちゃん目線を忘れないセンターであり続けたい。
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